身体美学美学的女性評

福島千里

2017年6月1日

上半身正面

国内では長らく無敵、陸上短距離の女王。
話し方はおっとりした印象だが、心身ともに強靭。

若くして女王になったが、天才型ではない。
ジュニア時代は一度も日本一になっていない。
ライバルに負け続けていた。

高卒後進学した学校の陸上部で急速に伸びる。
その翌年十代で日本選手権優勝。
それから昨年まで女王の座に君臨している。
彼女の実績は記録づくめだ。

2008年
日本選手権100で優勝。
十代で参加標準記録Bを突破して北京五輪出場。
1952年の吉川綾子以来56年ぶりの五輪出場だった。

2009年
スーパー陸上100で優勝、日本開催国際大会で史上初。
1日に2回日本記録を更新。
日本選手権200優勝、世界選手権標準記録A突破。
世界選手権100一次予選突破、日本女子史上初。
五輪含むと1932年渡辺すみ子以来77年ぶり。

2010年
アジア大会100で優勝。佐藤美保以来44年ぶり。
さらに200でも優勝、二冠は日本女子史上初。
スラブ系白人の強豪に競り勝っての快挙だった。

2011年
日本選手権で100、200二冠達成。
世界選手権100〜200とも準決勝進出、女子史上初。
五輪含むと100は79年ぶり。200は史上初。

2012年はロンドン五輪に2大会連続出場。
とここまで獅子奮迅の活躍。
しかしさすがに新記録連発はなくなる。

それでも活躍は続く。
世界選手権も毎回出場。アジアの大会でも活躍。
アジア大会二連覇に挑むが惜しくも逃す。
その後も故障やスランプなどあっても必ず復活。

通算4回目の世界選手権では2大会ぶり準決勝進出。
去年は日本選手権で6年連続2冠達成。
リオ五輪にも出場。世界選手権4回、五輪3回。
日本女子としては前人未到の数字だ。
何十年ぶりの数字が示すように出場が困難だった。
参加標準記録が高い壁なのだ。

彼女は数十年に一人の選手だと言える。
それでも世界の舞台では花開かない。
短距離系は東洋人に最も困難な競技だからだ。

体力の差を技術でカバーできない。
その差が最も強く反映する競技なのだ。
だから身体能力の高い黒人の独壇場となっている。

男子はリオ五輪400継で銀メダルに輝いた。
チームプレー(技術)で差を埋めたからだ。
しかし女子はまだ層が薄いので届かない。
届くには福島選手級の選手が複数以上必要。

五輪100で決勝進出は、五輪マラソン優勝より難しい。
はるかに難しい。だからいまだゼロ。
同じ走るのでも両者は対極と言えるほど性質が違う。
(ただしマラソンも近年難しくなってきている。)

日本で勝てば世界に通用する競技も少なくない。
だが陸上短距離はアジア女王になっても届かない。
福島選手ほどの実力者であっても。

五輪では敗退してまったく注目されず。
女子メダリストが続々誕生する中で寂しく帰国。
実力者だけに深く傷ついたであろう。

自分の道が特別困難であることを痛感したはず。
並みの選手なら燃え尽きてしまうかも知れない。
だが彼女は必ず蘇り、挑戦し続けている。

五輪メダリストだけが名選手ではない。
すっかり安っぽくなった国民栄誉賞など無縁でいい。
願わくばもっと価値ある形で報われてほしい。

余談
彼女は女性にしては筋肉質すぎる?。
と思う人もいるかも知れない。
でも競技を離れれば女性的な水準に戻る。
たくましさは変わらないだろうけど。

陸上美女伝説

短距離系は東洋人には厳しいが、いい点もある。
肉体美の選手が多い。
競技が美を育む要素を持っている。
ただし短足が長くなるという話ではない。
資質に恵まれていればより美しくなる。

女子にはなぜか美女が多い?。
女子スポーツ最初のスター選手は陸上短距離。
女子陸上草創期の大正時代に現れた寺尾姉妹だ。

天才美少女姉妹として登場。
実力と美人度の高さから、注目の的になる。
一卵性双生児なので美貌も才能も瓜二つ。

種目を分けて二人とも勝ち続ける。
どちらが走っても観客は歓喜。
当時は珍しいブロマイドも発売された。

姉妹の前に立ちはだかったのが人見絹枝選手。
姉妹を負かしたことでヒール扱いされたという。
人見は姉妹より大柄で5歳年上。

それでも人見は姉妹の人気を歓迎していた。
美人でなくて悪かったわね、何て恨み言は言わない。
姉妹が競技発展に貢献してくれると見ていた。
女性にはふさわしくない競技と見られていたからだ。

だが姉妹はまだ十代なのにまもなく引退してしまう。
過熱ぶりに父親が将来を危惧し、やめさせた。
彗星ように現れた姉妹は彗星のように退場した。
が大正デモクラシーを彩った美女伝説として残る。

平成の世でも美女は現れている。
福島選手の前の女王、新井選手も文句なしの美女。
彼女は童顔で、可愛いという形容の方が的確。
芸能人なみに磨かれれば一級品になっただろう。
ただ短距離の注目度が低く、宝の持ち腐れだった。

現役世代でも美人選手は少なくない。
短距離種目に注目すれば目につくはずだ。

追記 2017年6月28日

今月の日本選手権で彼女の連覇は途絶えた。
100、200両方落とし、無冠に終わった。
8連覇がすでに前人未到の記録。

短距離系の選手寿命は長くない。
10年近く女王でいることは奇跡に近い。
よくこれまで頑張ってこられたと見るべきだろう。
しかしまだ彼女の心は折れていないようだ。
彼女のことだから果たしてまた蘇る?。

身体美学講座からお知らせ。

ある陸上短距離選手を美のモデルとして解説しています。
青山学院大学でエースとして活躍した鳥原早貴さんです。