美の新基準、黒人
近代は白人の帝国主義、植民地支配の時代だったと言える。
南ア共和国のアパルトヘイト廃止も、香港の中国返還もついこの間の話。
原住民を奴隷支配し、アフリカでは黒人を生け捕り、各地で奴隷として売買した。
当初白人達は優れた人間が、劣った人間を支配するのは当然と考えた。
進化論が登場すると進化した白人に対して、進化の遅れた有色人種とこじつけた。
テーマから外れるので踏み込まないが、当時の奴隷の悲惨さは想像を絶する。
白人の優越意識の根拠は、能力や肌の色だけではない。
体形や顔立ちも根拠になった。
白人は黒人より美しく、それも優れている証しだと。
古代より美意識を発達させてきただけに、よくも悪しくも美にこだわる。
人種差別は永遠のテーマかも知れない。
世界の警察を自負し、正義感(押し売り?)の強い米国である。
だが国内ではロス暴動も起きればKKKも暗躍する。
奴隷制度が廃止されて一世紀以上経っている事を考えると、今後も楽観出来ない。
だが差別は変わらなくても、白人優越の根拠は揺らいできている。
その一つはスポーツにおける黒人の圧倒的な能力の高さ。
白人に勝るとも劣るとは今日誰も思わない。
さらに新しい現象として、美しい白人、醜い黒人という構図も怪しくなっている。
白人の肉体の美のイメージのルーツはギリシャ、ローマの古代美術にまで遡れる。
ボディビルも創始者が、その彫刻の美しさに魅せられた事がきっかけで生まれた。
白人の美意識は、このヘレニズム文化に由来するヘレニズム形を基本としている。
それが今日の世界の美のスタンダードでもあり、日本人の美のモデルでもある。
ところが黒人には、ヘレニズム形にははまりきらない美が生まれてきている。
白人と黒人は骨格も違う。黒人の特徴が独自の美を形成しつつある。
細く長い手足、高いヒップの位置、小さい頭、どれもヘレニズム形とは一味違う。
スーパーモデル、ナオミ・キャンベルもまさにこの新しい美の体現者だ。
走るモデル、ペレク選手(五輪金メダリスト)は美と同時に身体能力も見せつけた。
スリムで強靭、これも黒人の特徴の一つだ。
黒人的特徴を持った逞しい肉体美やグラマーな美も勿論ある。
厚い胸、逆三角形の男性美、太い太股、大きな胸されど均整の取れた女性美等々。
一番美醜の根拠となった顔立ちにも同じ変化は起きている。
ボクシングで一世を風靡したM・アリは自ら美しい顔と自慢した。
確かに端正だった。
マイケル・ジョーダンは男性美の見本のような風格。
H・ヒューストンは映画で美しいヒロインを演じた。
黒人の美男美女は今後増えそうだ。
ではこの現象を生み出している源は何か。
逆説的だが、白人の肉体的美意識、肉体文化の影響と考えざるを得ない。
それが顕著に見られるのは米国など、白人文化の中で生きている黒人だからである。
アフリカの黒人にはそれ程強くは見られない。
つまり白人の美意識とアフリカの血が結合して生まれた新しい美と考えられる。
黒人的特徴の中に、ヘレニズム的要素も息づいている。