美空ひばり2015/7
戦後昭和を代表する歌手。
少女時代から天才ぶりを発揮、若くして成功する。
以降没するまで歌謡界の女王の座に君臨し続けた。
石原裕次郎と共通点が多い。
同じ時代を代表する随一の人気スター。
時代に求められた時代の体現者だ。
時代に愛されたが故か、共に昭和の終焉と共に早世。
共に病没であり、没年齢も同じ。
病にも共通の要素が見られる。
カリスマ的人気に応えるための苦悩があったのか。
酒に溺れがちで、健康を蝕む大きな要因になった。
共に国内では圧倒的人気だが、海外進出はなかった。
三船敏郎は世界で絶大な名声を得ていた。
石原に世界的名声はないが、国内人気は三船を上回る。
彼女が世に出た時代は、戦後昭和の草創期。
後世のアイドル歌手の時代とはまったく違う。
新時代の文化、娯楽、大衆芸術の担い手として登場。
卓越した才能でその立役者となった。
洋楽も手がければ世界的歌手もありえたという説もある。
東洋のスター、山口淑子(李香蘭)は戦後米国に進出。
活躍の場を得て、評価もされたが大成功とまではいかず。
活動の場を日本や中国に戻している。
さらに名声も捨て、結婚して引退する。
後に芸能以外で活躍することになる。
その後も日本の女性歌手の米国進出は複数以上ある。
しかし山口を超えた例はない。
欧米で認められないと、世界的とはいかない。
東洋人には想像以上に見えない壁がある。
彼女が日本のスターであり続けたのは正解か。
ボブ・ディランは長らく日本に縁がなかった。
初来日果たしたとき、公演会場には彼女の姿があった。
ディランのファンだった訳ではない。
親交のあった歌手、岡林信康の影響で関心を持った。
岡林が崇拝するのだから素晴らしいのだろうと。
だが当時のディランはすでにロックに転向した後。
ロック調になじめなかったのか、途中で退席している。
世紀の詩人、伝説的アーティストと歌謡界の女王。
音楽界のカリスマ同士でも世界が違ったようだ。
酒に溺れるくらいだから私生活は苦難多い生涯だった。
芸一筋の人生で、女の幸せをつかむことはなかった。
若くして結婚するも2年で離婚。
儚い夢から冷めたように、再婚することはなかった。
後世のスター歌手、松田聖子や山口百恵とは対照的。
両者は女の幸せもしっかりつかんでいる。
特に松田は力強く、芸の道も女の道も両立。
生き方についてもカリスマ性を発揮している。
才能と栄光に恵まれても、私生活は恵まれず早生。
光と闇が交錯する人生、古今東西スターに多く見られる。
歌手だけでもビリー・ホリディ、エルビス・プレスリー。
マイケル・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン等。
彼女も結果的にその一人だと言えるだろう。
若くして成功したので、早生なれどキャリアは長い。
約40年に及び、録音された曲は数多い。
いわば身を削って残した生きた証。
歌の世界観、ファッション、美意識など基本的に昭和。
大胆な水着グラビアなど存在しない。
身体で明らかなのは、隠しようがない身長のみ。
日本女性の平均よりかなり小柄な人だった。
3サイズなど誰も知らない。
芸とはなんの関係もないからだ。
彼女はあくまで歌で認められ、歌で成功した。
純粋に芸に生き、芸に命を捧げた。
だが時代は昭和歌謡、特に演歌系は衰退していく。
ポップス系が主流になっていく。
振り付けも発展し、本格的なダンスになる。
彼女の洗練された歌は、戦後昭和の大衆芸術の粋。
頂点に達した後、時代とともに命も燃え尽きた。
歌手としては本望だったろう。